2009年7月2日木曜日

役者(小話)

現場に凶器を捨てて行く
もう必要無い
二時間後処理班により押収された刃物には
血糊一滴付いてはいなかった
愛用と名高いデリンジャー
煙を吐いた形跡すら無かった
翌日、いつもの使用人が見つけたのは
ジャケットに付いた奇妙な皺
片腕だけがひしゃげていた

階下ではいつものように朝食を摂る彼
こころなしか機嫌は良さそうに

彼が食後のコーヒーを飲む段になり
やっとその他の彼らは不文律に気付く
触ってはいけないものがある
彼は微笑みもせずに恋人を待つ
犯人は誰かなんて
それ自体が趣味の悪い問いだった

0 件のコメント: